キューブ系パズルの攻略法の攻略法
キューブ王 海永
キューブ系パズルを攻略する方法を見つける方法(攻略法の攻略法)を解説する。
ルービックキューブを例にして説明する。
[観察、名称]
まずは、キューブの形状や動きを観察する必要がある。そして構成要素に相応しい名前を与える必要がある。
以下、個別の要素に名前を与える(島内先生)。観察しつつ名前を与える。ルービックキューブ、全体は立方体である。そして、27個の小立方体から全体が構成されているようにみえる。
面毎に違う色が付いている。白色、黄色、赤色、など。
個別の面に名前を与える。
South, East, North, West, Top, Bottom or S,E N,W,T,B
個別の面の表層だけを左右に90度回転できる。回転しても形状(立方体)は保たれる。しかし、色がそろわなくなる。
何度か表層を回転すれば、色がばらばらになってくる。ばらばらになっていた色をきれいにそろえることがパズルの課題である。
さて、小立方体をよく観察すると、小立方体は3種類に分類できることが分かる。大立方体の隅に配置され3面見えるもの。大立方体の辺に配置され2面見えるもの。個別面の中心に配置され1面見えるもの。
3面見えるものを3面体、2面見えるものを2面体、1面見えるものを1面体(or臍)と呼ぶ。
[操作]
個別の面を90度右回転する操作を、面の名前と同じ名前で呼ぶ。
S,E,N,W,T,B
SをしてEをすることをSEと書く。Sの逆(90度左回転)をS^と書く。SやEで、1面体は移動しない。その位置での回転だけ、2面体は別の2面体位置へ移動し、3面体は別の3面体位置に移動する。2面体が3面体の位置へ行くことはない。するとSやEでの動きを3つに分解した図解が意味をもつことになる。
[座標系]
操作での動きを明確にするには、その前に位置を特定する必要がある。つまり座標系を導入する必要がある。「座標」とは、国語辞典によれば、「点の位置を基準の点や線からの距離などで示した数値」とある。また「座標系」とは、対象にその座標を対応させる仕組み」とある。我々の場合、「数値」は不要である。小立方体がどの位置にあるかをいえればいい。
3面体は、T面とE面とS面に載る位置に配置される場合がある。この位置をTESを呼ぶ。他に位置SEBもある。
2面体は、T面とS面に載る位置に配置される場合がある。この位置をTSと呼ぶ。他に、位置SE,TEもある。
1面体は、1つの面にしか載らない。例えばS面に載っている。この位置をSと呼ぶ。他に位置T,Eもある。
以上は、小立方体が置かれる位置を特定するための座標系を決めたのであるが、個別の小立方体を区別するための名称系を定めていてもいい。普通には、見えている色をリストアップすればいい。例えば、3面体白赤黄、2面体白黄、1面体白、など。
個別の位置にどの小立方体がどういう状態で配置されているかは、位置の座標と小立方体の名称を対応づければ説明できる。例えば、「2面体白黄が位置TSにある」というのは、上の真ん中の図の位置TSの状態を表している。一方、「2面体黄白が位置TSにある」というのは、位置TSに小立方体白黄がスピンした状態で配置されている状況を示している。
[基本操作]
操作Sや操作Eなどを闇雲に適用していけば、色がばらばらになっていく。色を揃えるのは不可能だろう。
結局、動きの少ない操作(基本操作)群をいくつか用意しておいて、それら基本操作を順次に適用していき、総ての色を揃えることになろう。例えば以下のよう。まず、3面体の動きを無視した基本操作。
動きは、操作の前後に、個別の位置に何があったかで記述できる。例えば、操作Y=SE^S^Eを考える。位置TSに最初白黄があり、それは操作後に位置ESに移る。同様に、位置ESに最初赤黄があり、それは操作後に位置ERに移る。
しかし、個別の位置に何色の小立方体があったかに無関係に、同じ操作でいつも同じ動きになるわけで、動きを示すには矢印が相応しい。矢印は、移動元の面位置を始点とし、移動先の面位置を終点とする。そこに何色の小立方体があったかに無関係に動きを記述できる点が好ましい。以降、動きは矢印で表現する。
なお、最初の3つの操作(Y,Z,BZB^)は、2面体3つの配置位置を順繰りに移動させるもの(長さ3の巡回置換)。最後は、勿論、色揃え用の操作である。同じ位置でのスピン2つ。
以上の4つの基本操作を上手に使用すれば、2面体の配置位置と色を正しく揃えることができる。
次に、3面体にたいする基本操作群。以下でよかろう。2面体は不変である点に注意。
最初の2つは、3面体の2つの配置位置を交換(互換)するものが2つ。3つ目は、3面体3つの配置位置を順繰りに移動させるもの(長さ3の巡回置換)。最後は、勿論、色揃え用の操作である。同じ位置でのスピン2つ。
[奇置換、偶置換]
以上で、ルービックキューブは色を揃えられる。しかし場合により、2面体2つの配置位置を交換(互換)したいことがある。なお、互換の数が奇数の置換を奇置換という。
この場合、1つTなどの操作を加えると、状況が好転する。Tなどは、長さ4の巡回置換であるが、これは奇置換である。この奇置換を余分に適用して、目標の動きを偶置換としたことになる。偶置換であれば、上に示した基本操作群で必ず色を揃えることができる。
[1つの攻略法]
以上の攻略法をまとめる。
(1) 個別の2面体を相応しい位置(臍の色を基準)にそろえる。 Y,Zなどを使用。
(2) 場合により、Tなどの操作を加える必要がある。
(3) 個別の2面体を相応しい色にする。 SE^S^E T^ETE^使用。
(4) 個別の3面体を相応しい位置にそろえる。 Y3,Z3,YWY^W^などを使用。
(5) 個別の3面体の色をそろえる。 Y2WY^2W^など使用。
[攻略法の攻略法]
以上、ルービックキューブの1つの攻略法を示した。以降、攻略法の攻略法の説明に入る。
なお、「攻略法の攻略法」とは、基本操作(動きの少ない操作)を見つける方法という意味である。
[1点干渉]
1点干渉という考えが、最重要であろう。以下の図を考える。
SとE^で動く位置を問題にしている。両方の操作で共に動く位置が1つある。位置SEである。両方の操作で共に動く位置が1つである2つの操作を互いに1点干渉と呼ぶ。その操作をG,Hとして、操作GHG^H^を適用する。すると、常に長さ3の巡回置換になる。S,E^は1点干渉でY=SE^S^Eは長さ3の巡回置換である(右から2つ目の図)。S,Eは1点干渉でZ=SES^E^は長さ3の巡回置換である(右図)。なお、GHG^H^をGとHの交換子と呼ぶ。
[2点干渉]
同様に2点干渉という考えも重要。以下の図を考える。
SとE^で動く位置を問題にしている。両方の操作で共に動く位置が2つある。両者は隣接している。位置TSE,BSEである。両方の操作で共に動く位置が2つで両者が隣接している2つの操作を互いに2点干渉と呼ぶ。その操作をG,Hとして、操作GHG^H^を適用する。すると、常に2つの互換となる。S,E^は2点干渉でY=SE^S^Eは2つの互換になる (右から2つ目の図)。S,Eは2点干渉でZ=SES^E^は2つの互換になる(右図)。
[一見対称]
次に大事な考えは、一見対称。一見、鏡像対称や回転対称に見える操作のことを一見対称という。その前に、鏡像操作の意味を明確にしておく。 なお、以降動きに伴う色の変化は表示しない。動きは矢印だけで示すものとする。
Y3の動きは、完全に左右同じである。こういう動きを鏡像対称という。この場合、Y3の後で、鏡像の操作(Y3)m=(E^SES^)3を適用すれば元に戻る。つまり、何も動かなかったことになる。鏡像操作は以下の表に従って構成すればいい。
本来の操作: S S^ E E^ T T^ …
鏡像の操作: E^ E S^ S T^ T …
本来の操作の鏡に映った操作を、順次に適用していけばいい、ということ。
さて、操作Kの動きに注目する。この鏡像操作Km=N^(E^SES^)N(SE^S^E)はKの逆K^に極めて近い。少なくとも小立方体が動く位置は一致する。しかし、面まで考えると一致してない。そこで、KK^の代わりにKKmを適用する。KK^だと何も動かない。しかし、KKmだと、位置は動かないが、スピンが発生している(右図)。
次に回転対称と一見回転対称。以下の左図を考える。
操作Yの動きに注目する。本来の視点でなく、右上の新しい視点から眺めても一見同じ動きにみえる。そこで、新しい視点でYを行う。これをYRと呼ぼう。YR=ET^E^Tである(左から2番目)。その逆TR^は右から2つ目の図。
YY^だと何も動かない。しかしYYR^だと、位置は不変だが、色が変わっている。スピンしているということ。実はこの操作YYR^は、[基本操作]の最初の図の右図そのものであった。
[まとめ]
以上をまとめる。以下のようにすれば、基本操作を発見できる。
(1) 互いに1点干渉、互いに2点干渉の2つの操作を見つけ、両者の交換子を適用してみる。
(2) 操作の逆と鏡像が一見同じにみえる操作を見つける。
順操作の後に鏡像操作を適用してみる。
(3) 視点を回転してみても一見同じにみえる操作(とその回転角)を見つける。
最初の操作の後に、視点を回転した操作の逆操作を適用してみる。
[基本操作例]
いくつか基本操作を示しておく。
YとWの動きに注目する。3面体は一点干渉。2面体は非干渉。K=YWY^W^で、3面体は長さ3の巡回置換。
Y2とWの動きに注目する。Wで動く3面体位置の1つでY2はスピン。Y2WY^2W^で3面体2つがスピン。
これは、2面体3つを巡回置換するもの。
これは、3面体3つをスピンするもの。なお、S2とN^W^NWは1点干渉で、ここのGはS2とN^W^NWの交換子である。N^S2Nは、NとSが非干渉でS2で代用できるもの。