ラッチキューブの攻略法

キューブ王 海永

 初期の記事は、不十分な部分があった。それを今回(121104)補強するもの。絵は全面的に作りなおした。

 

[観察、名称]

 ラッチキューブは以下のもの。

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左はルービックキューブ。右の2つがラッチキューブ。真ん中は、白、黄、緑の3面を見たもの。右は、灰、青、赤の3面を見たもの。

ラッチキューブ、ルービックキューブに矢印が余分に付いたものといえる。この矢印、単なる記号という訳ではない。その方向にしか回転できないことを示す記号である。1つの面に、左巻き矢印(黒色)と右巻き矢印(赤色、実際は白色)が現れていれば、その面は回転できない。1つの面に右巻き矢印だけがあれば、その面は右回転できる。1つの面に左巻き矢印だけがあれば、その面は左回転できる。1つの面に矢印が1つもなければ、その面は右回転も左回転もできる。

 中の図を眺めると、白色と黄色と緑色の、どちらかというと淡い感じの色で構成されている。そして、全ての矢印が左巻きである。キューブは立方体なのだが、それを球とみなし、この3面で構成される半分を左半球と呼ぶ。真ん中の頂点部分を左の極と呼ぶ。

 右の図を眺めると、灰色と青色と赤色の、どちらかというと暗い感じの色で構成されている。そして、全ての矢印が右巻きである。この3面で構成される半分を右半球と呼ぶ。真ん中の頂点部分を右の極と呼ぶ。

 ルービックキューブでの名称を借用する。キューブを上の図のように配置したとして、その時の、個別の面(面位置)に名前を与える。

   South, East, North, West, Top, Bottom   or  S,E N,W,T,B

矢印制約を満たしていればの話だが、個別の面の表層だけを左右に90度回転できる。回転しても形状(立方体)は保たれる。しかし、色がそろわなくなる。

何度か表層を回転すれば、色がばらばらになってくる。ばらばらになっていた色をきれいにそろえることがパズルの課題である。

さて、小立方体をよく観察すると、小立方体は3種類に分類できることが分かる。大立方体の隅に配置され3面見えるもの。大立方体の辺に配置され2面見えるもの。個別面の中心に配置され1面見えるもの。

3面見えるものを3面体、2面見えるものを2面体、1面見えるものを1面体(or)と呼ぶ。

 

[操作]

 個別の面を90度右回転する操作を、面の名前と同じ名前で呼ぶ。

     S,E,N,W,T,B

  Sn回連続して適用することをSnと書く。SをしてEをすることをSEと書く。Sの逆(90度左回転)S^と書く。

SEで、1面体は移動しない、その位置での回転だけ。2面体は別の2面体位置へ移動し、3面体は別の3面体位置に移動する。2面体が3面体の位置へ行くことはない

 

[極を真ん中に置く基本操作]

 まずは、極を真ん中に置くというか、1つの半球が全て見えた状態での基本操作を考える。

 ルービックキューブの場合、Yという基本操作があった。以下の左。

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 ラッチキューブでも、初期状態であれば右半球や左半球に対してYの適用が可能である。ただし左半球の場合、SEは拒否されるのでS^3E^3で代用する必要がある()。右半球の場合、S^E^は拒否されるのでS3E3で代用する必要がある()

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 動き、特に矢印の動きを確認しておく。左半球で操作Yを適用すれば、左巻き矢印が全て左半球にとどまる。右半球で操作Yを適用すれば、右巻き矢印が全て右半球にとどまる。精密には、極3面体に隣接する2面体だけが動き、残りの2面体は不変である。

 Y系の操作に伴う、個別2面体の動きを確認しておく。個別2面体は、矢印付きの面の色と別の面の色を列挙して特定するものとする。

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 左の図に操作Y=SE^S^Eを適用するものとする。位置TSにある2面体「白黄」は3つの操作S,E^,Eに強要されて動き、位置ESに収まる。位置SEにある2面体「黄緑」は3つの操作S,S^,Eに強要されて動き、位置TEに収まる。位置ETにある2面体「緑白」は2つの操作E^,Sに強要されて動き、位置TSに収まる()

 次に真ん中の図を考える。まず、"Y(S)"の意味。普通T面を上に見つつYをしていくのだが、視点を変えてS面を上に見つつYをするというのがY(S)Y(S)=ET^E^Tであり、Y(S)^=T^ETE^である。この真ん中の図に操作Y(S)^を適用したとする。個別の2面体の詳細な動きの説明は省くが、結果は右の図となる。左の図と比べる。個別の2面体が収まっている位置は同じである。しかし、2面体「白黄」と「白緑」がスピンしている。スピンの有無は移動回数に関わる。スピンした2面体は、移動回数が奇数回である。スピンしない2面体は移動回数が偶数回である。例えば、2面体「白黄」は最初のYで3回移動し2回目のY^で2回移動し、合わせて5回である。

 ある2面体が動いていって、最終的に最初の位置に戻ったとする。この時、動いた回数が偶数回ならスピンしてない、動いた回数が奇数回ならスピンしている。この点はかなり重要である。操作T,S,Eなどは(捕捉している)2面体4つを動かす(正確には、公転させる)。こういう操作系列を適用した結果、全ての2面体が最初の位置に戻ったとする。この時、スピンしている2面体はいくつあるだろうか。偶数個である。操作T,S,Eなどが2面体4つを動かすのであるから、移動回数が奇数回の2面体が奇数個となることはないからである。

 

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 ルービックキューブではZという基本操作もあった。この操作の可否や動きも確認しておく。初期状態であるとしての話。

左半球に操作Zが適用可能(左の図2つ)、左矢印は全て左半球にとどまる。ただし、操作Yとは決定的に違う部分がある。Yでは極に隣接する2面体だけが動く。Zでは、極に隣接していた1つの2面体が隣接しなくなる。隣接してなかった1つの2面体が極に隣接することになる。

右半球では操作Zは途中で拒否される。代わりにZの鏡像操作Zmが可能()、右矢印は全て右半球にとどまる。

右半球で操作Zが拒否される理由を説明しておく。EB位置の2面体「白赤」の白面上の左巻き矢印が、右半球に侵入したからである。Z=SES^E^Eで侵入した左巻き矢印がS^の操作を拒否したもの。

 

[半球と赤道]

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 ラッチキューブの場合、半球概念が重要である。矢印が半球制約を満たしたとした場合の話であるが、半球全体が見えるように配置した状態でY系操作を適用すれば、必ず完遂できる。そういう意味で重要である。

 実は半球、2つの定義がある。1つは既に定義してあるもの。臍の白、黄、緑が定める3面の左半球、臍の黒、赤、青が定める3面の右半球、という定義。この最初の定義の場合、2つの境界を明示するための線は不要であろう。実際にそういう線は導入してない。

 さて、2番目の半球定義、初期配置の2面体位置を分類するもの。左巻き矢印が付いた2面体がある位置を左半球、右巻き矢印が付いた2面体がある位置を右半球と呼ぶ。半球の境界線を導入する必要があろう。境界線を赤道と呼ぶ。なお、極3面体は、半球の極に位置していて重要。残りの6個の3面体は赤道に位置していて、どちらの半球にも属してないものとする。というか、半球概念は2面体の移動に関わるものであり、3面体はどうでもいいということ。

 

[3面体だけを動かす基本操作]

 3面体だけを動かす基本操作を示しておく。2面体は全て所定の位置に収まっているとして、その後3面体だけを動かしていく攻略法で有効。

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Y3や右半球で(Zm)3を適用した際の動きを確認しておく。左半球でのZ3の動きは類推可能であろう。省略。これらは全て、3面体について互換2つ。

Y3は、ラッチキューブでは重要である。

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3面体3つを巡回置換する操作Kも大事である。左のKT面の3つが巡回置換。W^は実際にはW3で代用する必要がある。右は、Kとその鏡像Kmとの積KKmによる2面体2つのスピン。なおKmY^N^YNである。

 左端の図を眺めれば、K=YWY^W^WW^に置き換えても操作できることが分かる。またWEE2に置き換えても操作できる。ただし、使うには、そういう操作の動きを暗記しておかないとならない。当方は暗記に弱いので、使う気になってない。暗記もしてない。

 

[極を真ん中に置かない基本操作]

 次に、極を真ん中に置かないというか、半球2つが見える状態での基本操作を考える。

 

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 まず、極を真ん中に置かないYを考える。この2つの図を初期状態として、操作Yや操作Y^が可能である。この種の配置で操作Yや操作Y^を適用したくなる状況はラッチキューブでは多発する。どのパターンで可能で、どう変化するかをよく把握しておく方がいい。

 

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 半球内での1つの互換を実現するやり方を示しておく。Yの後でEでいい。左半球に1つの互換、右半球に長さ3の巡回置換となる。

 

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初期状態から、右巻き矢印1つと左巻き矢印1つをスピンさせる例を示しておいた。ここでは、これ以上の具体例は提示しない。左端の図、裏面は見えてないが、矢印が完全に揃っている初期状態でないとならない。右図を左図にする操作は、矢印を揃える際の最後の操作の立場になる。

 

 [攻略法]

 1つの攻略法を示しておく。

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4つのステップで攻略。

A)     最初、3面体は無視する。また2面体の色も無視する。矢印だけ考える。6つの左巻き矢印を左半球に持ってくる。さらに、6つの右巻き矢印を右半球にもってくる(左端)。ここは、適当にカチャカチャすればいい。
そして、矢印の向きもそろえる。操作Z,Zm,Yが活躍。図4の操作も必要になろう。さらに図11の右図を左図にする操作も必要になろう。

B)     次に、2面体の色を揃える。矢印も必然的に揃う。左半球も右半球も (左から2番目)。操作Yと操作ZZmが活躍しよう。図10の操作も必要になろう。

C)     次に、2つの極位置の3面体の色を望ましいものとする(右から2番目)。操作Y3が活躍。操作K=YWY^W^が必要になる場合もある。

D)    最後に、残りの3面体の色を揃える(右端)。操作K=YWY^W^とその鏡像Kmが活躍しよう。3面体のスピンではKKmが活躍。極を真ん中に置かないK=YWY^W^などが必要になる場合もあろう。

 

[錐揉み巡回、スピン]

 ルービックキューブの時に分かっていたのだが、誰にも話したことがない「錐揉み巡回」を説明しておく。

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 左の図に操作Y^は適用できないが、B^Y^Bなら適用できる。移動の矢印は左の図に、移動の結果は中の図に書いてある。中の図を眺める。左半球に属していた2面体「白赤」が右半球に移動したと解釈できる。逆処理B^YBを適用すれば、中の図が左の図になる。この場合は、左半球に属すべき2面体「白赤」を右半球から左半球に移動させたと解釈できる。

 中の図に、さらにT^を適応する。すると右の図になる。B^Y^BT^の移動の矢印を右の図に書いておいた。右の図を眺める。左半球内に長さ3の巡回置換が発生している。右半球内に長さ2の巡回置換が発生している。左半球での移動矢印を追っていく。TWTを出発点とし、TSTに行き、それがTNNに行き、最後にTWW(Tではない)で終わっている。すると、矢印系列は閉じてない。移動方向を軸とした回転により閉じなかったと言えよう。こういう巡回置換を「錐揉み巡回」と呼ぶ。勿論、個人的な趣味に従う命名である。 B^Y^BT^の錐揉み巡回の後で、普通の巡回置換(の逆処理)で個別の2面体を元の位置に戻せば、1つ(or3つ)スピンしているであろう。

 ラッチキューブの場合、B^Y^BT^を3回連続適用できないのだが、ルービックキューブなら連続適用できる。3回適用すれば、全ての2面体が元の位置に戻る。しかし、全ての2面体がスピンしている。これが錐揉み巡回の特徴である。

 右半球内の長さ2の巡回置換も錐揉み巡回である。

 

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